本記事では、リチウムイオンセルやバッテリーパック、電子部品を使った実験を紹介しています。 これらの作業は、Sensloop Lab の安全な環境で行ったものです。
安全に作業するため、次の点に気をつけてください:
- 手袋や保護メガネなどの保護具を必ず着用してください。
- 作業を始める前に、電圧のチェックと絶縁処理を行ってください。
- 高電圧のバッテリーパックを扱う場合は、できるだけ経験者と一緒に行ってください。
研究員の皆さま、こんにちは。🔋
今回は、研究員の方から依頼された Milwaukee M18 18V 6Ah バッテリーパックを点検しました。
外観は正常でしたが、内部電圧を測定すると完全放電状態でした。

本実験では、過放電セルを取り外し、Samsung 30Q 正規セルへ交換することで
定格容量へ復元しました。
🔍 初期点検
外観に損傷はありませんでしたが、残量インジケーターは完全に消灯。
テスターで測定したところ、総電圧は 15.2V。
さらに 10 本のセル中:
- 4 本 → 0.0V(完全放電)
- 6 本 → 約 3.7V を維持
という極端な電圧差が確認できました。
この不均衡により、出力と残量ゲージが作動しない状態でした。

■ 測定結果(表)
| 項目 | 正常基準 | 測定値 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 総電圧 | 18.0V ±0.5V | 15.2V | 不均衡 |
| セル偏差 | ±0.02V 以下 | 3.7V vs 0.0V | 異常 |
| 残量表示 | 4段点灯 | 消灯 | BMS保護動作 |
| BMS保護回路 | 正常 | 開放(OFF) | 出力遮断 |

0V のセルが 4 本確認され、残量表示が点灯しない原因が明確になりました。
⚙️ 損傷セルの分離と交換準備
既存セルのニッケルタブを取り外し、ショートを防ぎながらセルを分離しました。

交換には Samsung SDI 正規 INR18650-30Q(2,950mAh / 15A級) を使用します。
信頼性と安全性が高く、電動工具用途に適したセルです。
すべての新セルは 4.18V ±0.01V にバランス充電して準備を完了しました。

🔧 新セル組立 — Samsung 30Q 正規セル適用
セルを元の 5S2P 構成で再配置し、スポット溶接を実施。
その後、セルグループ(B1~B4)の電圧を個別に確認しました。
30Q セルは定格電圧 3.6V、内部抵抗約 14mΩ の高出力モデルで、
交換により出力安定性と効率が向上します。
測定結果:
- B1: 4.18V
- B2: 4.18V
- B3: 4.18V
- B4: 4.18V

電圧偏差はなく、組立・バランスともに正常です。
■ 性能比較(表)
| 項目 | 旧セル(30Q) | 新セル(30Q) | 改善内容 |
|---|---|---|---|
| 定格容量 | 2,950mAh | 2,950mAh | 同等 |
| 最大放電電流 | 15A | 15A | 同等 |
| 内部抵抗 | 28〜35mΩ | 14mΩ ±1 | 損失低減 |
| 総容量 | 約6.0Ah | 約6.0Ah | 新品で性能回復 |
🔌 BMS 接続と最終点検
セル電圧がすべて正常であることを確認し、BMS を再接続しました。
端子部の酸化を防ぐため、フラックス洗浄と絶縁処理も実施。

充電テストでは LED 4段点灯が正常に作動し、
充電電流・発熱ともに安定範囲内でした。
■ 復元前後の比較(表)

| 項目 | 修理前 | 修理後 | 改善内容 |
|---|---|---|---|
| 総電圧 | 15.2V | 20.8V | 正常復帰 |
| セル偏差 | 最大 0.8V | ±0.01V | 完全バランス |
| 内部抵抗 | 測定不可 | 平均 14.5mΩ | 電流安定化 |
| 残量ゲージ | 不作動 | 正常作動 | BMS 復元 |
🧠 研究員コメント
今回の復元では、同一モデルの Samsung 30Q 新品セルへ交換することで
性能を大きく回復できました。
旧セルは 30Q 系列ではあるものの、
- サイクル劣化
- 内部抵抗の上昇(約 30〜35mΩ)
などにより BMS が保護モードへ入り、出力が遮断されていました。
新品セル(内部抵抗 約14mΩ)への交換により、
- 電圧維持力
- 瞬間出力
- 発熱抑制(±2°C 以内)
が大幅に改善し、総電圧も 15.2V → 20.8V に復元されました。
Sensloop Lab では今後、同一セルの劣化度による出力差を
体系的に比較する実験も進めていく予定です。🔋